LeaPath代表の中川です。
今回は、中小企業診断士の年収について、8つのキャリアパターンとともに詳しく解説します。
中小企業診断士になったけど、どのような活動があるのか、どのような活動に自分は向いているのか、どの方向に進みたいのか・・・・など
悩まれている方も多いとは思いますが、是非参考にしてください。
1.中小企業診断士の年収について
中小企業診断士の年収の内訳は、一般社団法人中小企業診断協会の令和3年の調査によると以下表の通りとなります。
選択肢 | 回答数 | 構成比(%) |
300万円以内 | 83 | 14.3% |
301~400万円 | 51 | 8.8% |
401~500万円 | 58 | 10.0% |
501~800万円 | 124 | 21.4% |
801~1,000万円 | 66 | 11.4% |
1,001~1,500万円 | 89 | 15.4% |
1,501~2,000万円 | 39 | 6.7% |
2,001~2,500万円 | 25 | 4.3% |
2,501~3,000万円 | 16 | 2.8% |
3,001万円以上 | 28 | 4.3% |
合計 | 579 | 100.0% |
(引用)https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf
決して平均年収は低くなさそうですね。一方、バラつきが多いのも確かです。
ポイントとしては、以下の3点が挙げられます。
① ボリュームゾーンは501~1,000万円(26.8%)
② 300万円以内の診断士と1001~1,500万円の診断士も多い
③ 1,500万円以上の診断士も約20%存在する
2.なぜ中小企業診断士の平均年収にバラつきがあるのか?
結論:攻めるセグメントが異なるため
中小企業診断士は、独占業務がないがゆえに、様々な働き方が可能な職業であるといえるでしょう。
特に中小企業診断士の場合、キャリアパターンが多いが故に、年収のバラつきが激しいと推察されます。
そのため、中小企業診断士の皆さんは、どのセグメントで活動するのかを事前に戦略を立ててキャリア構築していく必要があるということです。乗る列車によって年収が大きく変わってくるはずです。これは診断士業界だけでなく、一般論としても言えることですが、年収を規定するのは能力・スキルだけではなく、業界(つまりは属するセグメント)や活動のベクトルであるということです。
私自身も中小企業診断士・コンサルタントとして活動し、周りの中小企業診断士のキャリアも聞いたり見たりしたうえで、以下の8つのキャリアパターンがあると考えました。
①社内診断士セグメント
②副業セグメント
③補助金セグメント
④セミナー・講師セグメント
⑤公的機関セグメント
⑥コンサルセグメント(中小企業)
⑦コンサルセグメント(大企業)
⑧顧問・外部取締役セグメント
ケース①【社内診断士セグメント】
社内診断士の場合は、収入は帰属する企業の年収イコールとなりますから、収入が増えるわけではありません(手当などがある会社もありますが、大した金額ではないケースがほとんどです。)
(年収):所属する企業の年収次第
(難易度):小
(特徴):所属企業の年収に依存する
ケース②【副業セグメント】
自身の月の稼働率を20%程度に抑えたうえで、本業の合間に活動するセグメントです。
しかしながら、あくまで副業(平日夜や土日)で、本格的なコンサルは難しいため、後述するケース⑥・⑦は難しいかと思います。
周りの話を聞いていると、副業の場合は、副業部分のみで年収200~500万円くらいがボリュームゾーンかと思います。
(年収):副業部分のみ年収200〜500万円
(難易度):小
(特徴):本格的なコンサルティングは難しい
ケース③【補助金セグメント】
補助金バブルとも言われたように、事業再構築などの補助金で食べている方も多いかと思います。
実際に中小企業の資金獲得にもなりますし、中小企業の役には立つと思いますが、コンサルティングの範疇ではないと思います。
補助金の場合は、成果報酬で契約する場合と準委任で契約する場合があると思いますが、前者の場合は、仮に成果報酬が10%で、補助金額は1,000万円だとしても、100万円ですから、そこからは何件こなせるかの勝負です。
そのため、中小企業とのネットワークを多数保有している銀行出身者、社労士、税理士などにアドバンテージがあるキャリアパターンである可能性が高いです。
しかし、近年の補助金バブルの代表格とも言える事業再構築補助金については、採択率が大幅に下がっており、将来的には無くなる可能性は十分高いと考えられているように、補助金には波がありますので、環境リスクは高いでしょう。
(年収):1,000〜3,000万円
(難易度):中
(特徴):補助金の波に左右されるため、環境リスクが高い
ケース④【セミナー・講師セグメント】
うまくやれば意外とニーズのあるセグメントです。
実際に、先輩診断士2名に聞いたところ、1人は10万円/回、もう1人は20万円/回と仰っていました。
銀行系などが主催している研修だともう少し安いです。(実際に私がメーカーでの仕事で中小企業診断士に依頼した人事評価者研修は9万円/回でした)
自身をしっかりとブランディングし、セミナーを極めればセミナーだけでも食べていけますが、案件継続という観点では、単発に終わることもあるため、「コンサルティング+α」として考えることもアリだと思います。
ちなみに私が実施している管理職研修は、受講者の高いアウトプットを担保したうえで、約10の研修実施で総額250~500万円の価格設定です。(受講人数が変数)
(年収):1,000〜3,000万円
(難易度):中〜大
(特徴):大きく稼ぐには自身のブランディングが特に重要となる
ケース⑤【公的機関セグメント】
公的機関は様々な案件があると思います。
公的機関で経験を積むのは大賛成ですが、公的機関での経験=民間での活躍には直結しない部分があるため、特に診断士1年目~2年目の方にはオススメで、とっかかりとしては良い仕事だと思います。
コンサル経験のある方は、公的機関セグメントは副業としての位置づけでも良いのではないかと思います。
フィーとしては、月額のものや回あたりのものなど様々なので、一概には言えませんが、数万円~十数万円が多いと聞きます。
つまり、“公的機関のみ”で年収を増やそうと思えば、かなりの案件数を同時並行で捌く必要が出てきます。
例外はあるとは思いますが、おおよそ年収500~700万円くらいに落ち着くと推察されます。
(年収):500〜1,000万円
(難易度):低
(特徴):公的機関のみで年収を増やしたい場合は、多くの案件数を同時並行でこなす必要がある
ケース⑥【コンサルセグメント(中小企業)】
実際のコンサルフィーの統計情報はほとんどないため、私が以前経験した中小企業向けの案件のフィーをご紹介します。
その案件では、50万円/月で、月稼働率としては40%程度でした。稼働率を100%換算(月2案件程度同時並行)し、単純計算すると100万円、年収ベースで1,200万円くらいになるのではないでしょうか。
先輩のベテラン診断士のケースでは、回あたり30万円の報酬とのことなので、経験を積んだり、社内に入り込んだりできると、フィーはさらに高くなる可能性があります。
(年収):1,000〜3,000万円
(難易度):中〜高
(特徴):診断士のコンサル先のボリュームゾーンであり、経験や社内への入り込み、診断先の規模次第では、報酬も高くなる可能性がある
ケース⑦【コンサルセグメント(中堅~大手企業)】
私も実施している中堅~大手向けのコンサルティングフィーは、案件にもよりますが、平均すると、150~200万円/月・件が多いです。
仮に、この月収を自身のスキルを磨いて稼働率50%などで捌けるとなると、月2件程度こなせますから、150~200万円×2件となり、月収は300~400万円、年収はこのケース単独で3,600~4,800万円くらいになります。
最も年収が高いセグメントだと思いますが、最も難易度は高いといえます。なぜなら、経験とスキル、そして人脈の3つが揃っていないとなかなかできず、大手コンサルファーム出身者がかなり流入しています。
しかしながら、私はこのセグメントに中小企業診断士も活躍できる場があると考えており、リーパスでもスキルがマッチした会員の方に案件を紹介しています。ちなみに案件としては、新規事業・PMO・DX/ITが多い印象です。
(年収):3,000万円以上
(難易度):高
(特徴):難易度は高いが、報酬も最も高い
ケース⑧【顧問・外部取締役セグメント】
最後に、顧問や外部取締役セグメントですが、それぞれ分けて考えましょう。
このセグメントについては個人的に経験がないため、統計データを使うことにします。
まず、顧問についてですが、顧問料は平均14.2万円/月というデータがあります。加えて平均顧問数は7社なので、単独で約100万円、年収ベースで1200万円となります。
顧問先(平均) | 顧問料(平均) |
7社 | 142千円/月 |
(引用)https://www.j-smeca.jp/contents/enquete/p06.html
一方、外部取締役の場合は、以下の調査結果があります。
デロイトトーマツが発表した2021年度役員報酬サーベイによる社外取締役の報酬の中央値 | 800万円 |
2019年朝日新聞と東京商工リサーチが出した調査結果(東証一部上場企業の社外取締役の平均年収) | 663万円 |
これらから推察すると、外部取締役の役員報酬としては、一部上場企業では600~800万円であるため、中小企業の場合は、600万円未満の可能性も十分にあるということです。
会社によって様々なので一概には言えませんが、社外取締役は多くの中小企業診断士が最終的に目指す理想キャリアなのではないでしょうか。ちなみに私の知り合いの診断士(税理士とのダブルライセンス者)は、社外取締役を3社並行でしているため、年収はかなり高いです。
まとめ
このようにキャリアを整理していくと、年収のバラツキがあるのは当然であると分かります。
先ほど述べた中小企業診断士の年収の内訳と8つのケースを当てはめると以下表のようなイメージになるのではないでしょうか。
個人的なイメージでは、公的機関セグメントの活動の中で人脈などを形成した後に、民間へ参入して結果を残していくことで年収を上げている人が多いのではないかと推測します。
選択肢 | 回答数 | 構成比(%) | 想定されるケース |
300万円以内 | 83 | 14.3% | 副業セグメント(社内診断士含む) |
301~400万円 | 51 | 8.8% | |
401~500万円 | 58 | 10.0% | |
501~800万円 | 124 | 21.4% | 公的機関セグメント |
801~1,000万円 | 66 | 11.4% | |
1,001~1,500万円 | 89 | 15.4% | 民間セグメント(中小)顧問+セミナー、補助金など |
1,501~2,000万円 | 39 | 6.7% | |
2,001~2,500万円 | 25 | 4.3% | |
2,501~3,000万円 | 16 | 2.8% | |
3,001万円以上 | 28 | 4.3% | 民間セグメント(中堅・大手) 社外取締役など+セミナー、補助金 |
合計 | 579 | 100.0% |
これらのキャリアがあると分ったうえで、皆さんはどのようなキャリア戦略を構築しますか。
では、次の章では、どのようにして診断士のキャリアを成功させ年収を上げていくのかについて述べたいと思います。
中小企業診断士として年収を上げるためにどうすべきか
(1)独立・開業する
稼働率がモノを言うコンサル業界において、副業だとやはり限界突破はしにくいというのが正直なところです。
ですので、もし診断士として年収を大幅に上げたいと考える場合には独立・開業が大前提となると思います。(ただし独立すべきかどうかの見極めは肝心です)
自分自身がどれくらい稼ぎたいか、どういう働き方をしたいかを考えた上で、独立・開業については判断しましょう。
(2)純粋な能力/スキル、人とのつながり、営業力(コンサルスキルのレベルアップ)
最もフィー(報酬)が高いのは、経験上間違いなく比較的規模の大きい民間のコンサル案件です。
求められるレベル、後ろ盾がない中でやるプレッシャーなどを考えると当然かと思います。民間のコンサルを遂行するには以下のスキルが必要です。
① 純粋なコンサル能力
(地頭の良さ【情報処理の早さ、情報整理のセンス、同時並行できる能力など】、専門的な知識・経験、業務横断的な知見、クライアントとの関係性構築力)
② 営業力(営業の上手さ、複数の営業先の確保、人的ネットワーク)
③ 提案力(営業の際のスキルおよび次フェーズ提案【案件継続】するためのスキル)
育成リーパスでは、民間のコンサル案件に必要なスキルを向上させるための動画を沢山用意しており、
マッチングリーパスでは、民間のコンサル案件も紹介しています。
(3)ケース①~⑦を自身のスキルに合わせて横断的に実施する
筆者は
ケース④:セミナー・講師セグメント、
ケース⑥:コンサルセグメント(中小企業)、
ケース⑦:コンサルセグメント(中堅~大手企業)
を組み合わせて活動しています。
皆さんのバックグラウンド、スキルは人それぞれですから、まずは自身のスキルや経験したい内容に合わせて組み合わせていくことが重要だと思いますが、複数のセグメントを同時にこなすことで、様々な知見が溜まり、違うセグメントで活用することで、更にアウトプットの質を高めていくことができるため、①~⑦を横断的に実施していくことを推奨します。
私の例で言うと、中堅~大手のノウハウ・知見を一般論化し、中小企業へノウハウを還流することや、中小特有の伴走支援を中堅~大手でも実施して、他コンサルタントと差別化を図ること、コンサルの事例をセミナー・講師として共有することをスパイラルアップさせています。
いかがでしたでしょうか。
皆さんがどの分野で活躍されるかを決めるインプットとなれば幸いです。
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