プロコン解説!DXコンサルティング会社の選び方について

LeaPath代表の中川です。
今回は、中小企業の皆さま向けに、DXコンサルティング会社の選び方について述べていきたいと思います。
大手企業だけでなく中小企業でもDXの機運が高まっており、実際にDX推進を検討したり、任されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら、中小企業においてDXが十分に進んでいるとは言えない状況かと思います。では、なぜ中小企業ではDXを実現しにくいのか?ということを解き明かしながら、DXコンサルティング会社を選ぶコツについても説明していきたいと思います。

DXの定義

DXは、デジタルトランスフォーメーションの略です。
企業が、ビッグデータなどのデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立すること。

つまり、最先端技術を活用し、競争優位を構築するために、ビジネスそのものを見直すということです。

これは、アナログではできなかったビジネスモデルや製品・サービスをデジタルの力を借りるとできることもあるということも意味します。

ここで、よく勘違いされるのは、例えばSaaSや基幹システムを導入し、社内の効率化を図ることをDXということです。
社内効率化のみのIT投資は、厳密に言うとDXそのものではなく、IT導入です。
もちろんDXを実現するために基幹システムを導入して、データを整備するという意味ではDXの範疇に入りますが、社内効率化を目的にしているだけではDXを推進しているとは言い難いと思います。

社内効率化を目的としたIT導入をされている企業は多いですが、そこから新たなビジネスモデルや戦略を構築できている企業はそれほど多くありません。それは、後述する「DXの推進が難しい」という点に集約されていると考えます。

なぜ、いま中小企業もDXが重要なのか

では、なぜ中小企業でもDXが重要なのでしょうか。
理由は3つあります。

DXが中小企業で重要となっている理由

①    2025年の崖

②    大手企業のDX推進により、中小企業にも影響が出てくる可能性が高い

③    以前に比べて比較的導入しやすくなっている

①2025年の崖

経産省のDXレポート “ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開”によると、

「既存システムの問題解決と業務自体の見直し(経営改革そのもの)」などを行えない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると記述されています。

例えば、「既存システムの複雑化・ブラックボックス化」によって、

「データを活用しきれず、デジタル競争の敗者になる」
「多くの技術負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる」
「サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクの高まり」
などのシナリオが考えられます。

これらのことは、大企業に限らず中小企業にも当然影響を及ぼすため、DXは不可避な戦略であると言えます。

大手企業のDX推進により、中小企業にも影響が出てくる可能性が高い

筆者は中堅~大手企業のDX関連のコンサルティングも行っていますが、やはり大企業・中堅企業は最先端の技術を活用しDXを推進している企業は多いです。
その結果、大企業や中堅企業と取引する中小企業、および中小企業と取引する零細企業にも影響が及ぶことは必至であり、対応できない企業は、相見積もりなどの時点で後れを取ることが容易に想像できます。

大企業ほどの技術を活用する必要性はないかもしれませんが、要請されたIT要望に対応できる組織体制や知見、経験は蓄積しておく必要があります。

以前に比べて比較的導入しやすくなっている

そのような逼迫した外部環境の中で、データ整備・AI・IoTなど様々な分野の商品の価格が下がってきていること、さらには外部専門家や事例が多くなってきていることから、以前に比べれば随分と導入しやすくなっています。

昔はコボルを社内の唯一の情報システム人材が構築している中小企業も多かったとは思いますが、現在は様々なクラウドサービスを活用可能ですので、そこの組み合わせを戦略や業務に合わせてカスタマイズできる人材がいれば、推進できる環境は整ってきていると言えるでしょう。

中小企業でDXが推進しにくい理由

中小企業でDXが推進しにくい理由として大きく3つあります。

中小企業でDXが推進しにくい理由

①    社内の反発

②    DXの検討要素が多すぎること

③    社内でDXに詳しい人の不在

①社内の反発

大手企業・中小企業双方ですが、DXに限らず、“新しいこと”を始めると、どうしても社内の反発があります。経験上、特にDXではそれが顕著です。
この反発への適切な対応ができず、DX推進を頓挫してしまう事例は後を絶ちません。

その反発を未然に防ぐ方法や反発への対応方法についてのノウハウ・事例について、詳しく知りたい方は「管理職研修Vol.7 チェンジマネジメント」というリーパスの動画をご覧ください。

②DXの検討要素が多すぎること

DXの内容によりますが、基本的に効果を出すDXを行うには、検討すべき内容や領域はどうしても多くなってきます。
一例ですが、私とチームメンバーが過去に実施した案件におけるDXコンサルの範囲を記します。

DXを実現するために必要な検討要素・スキル要素

・DX戦略構築データ活用方針要件定義DB設計

・システム構成策定

・ネットワーク設計

・UI/UX設計

・フロントエンド構築

・保守・運用ルール策定(SLA含む)

・AIなどの特定スキル(スマートファクトリーであれば、PLCやMESなどのスキル)

相当多いですね。この複雑性と気が遠くなるような道のりで挫折する企業様も多いように思います。

③社内でDXに詳しい人の不在

前述のように、DXを推進する検討要素は極めて多いことに加え、そのスキルを全て持ち合わせている人材は、極めて稀です。

大企業の情報システム部門の中でも、得意領域が分かれるくらい、IT/DXは領域が広いので、中小企業なら尚更だと思います。
私も仕事柄エンジニアと関わる機会が多いですが、すべてのスキルセットを持っている人材は少なく、大きく4つに分かれると考えています。

パターン 得意なスキルセット(傾向) 苦手なスキルセット(傾向)
IT/DXコンサルタント DX戦略構築、データ活用方針、要件定義 エンジニアの領域に踏み込めないことは多い
バックエンドエンジニア システム構成、ネットワーク、保守・運用、DB設計などが得意 DX戦略構築やUI/UXの経験は少ないことが多い
フロントエンドエンジニア 画面開発、UI/UXなどが得意 バックエンドは苦手な人が多い
特定スキルエンジニア AI、RPA、PLCなど特定のエンジニアスキル DX戦略構築など上流の経験は少ないことが多い

必要な人材も社内で揃えにくい事がお分かりいただけたと思いますが、これが中小企業でDXを進めにくいひとつの要因になっていることは確かです。しかしながら、今後のビジネスの世界ではDXは避けて通れないものになってきています。

そこで、現実的な解決策が必要です。一言で言うとコンサルティング会社に外注することです。その場合、ある程度の投資は覚悟しなければなりませんが、DXはやり方によっては労力に見合うだけの価値があることを筆者も経験しています。

事例など、詳しく知りたい方は「DX戦略の構築方法Vol.1インプット編-DXで使える技術はこれだ!-」および「DX戦略の構築方法Vol.2アウトプット編-DX戦略を作ってみよう!-」というリーパスの動画をご覧ください。

例えば、こんなことも、半年くらい前にありました。
とある中小企業診断士の方から、ありがたいことに、軽く新規案件の打診をいただいたのですが、「いちから作る中規模システムを3カ月で仕上げてほしい」という内容でした。
すぐにそれは非現実的だと回答し、丁重にお断りしましたが、DXやシステム導入の検討要素を考えると、少人数では、とても3カ月ではできません。

この事例から言えることは、中小企業の方や中小企業診断士の方は、少なくともどのくらいでDXが実現できるのか、システム導入できるのかという感覚値は持っておいた方が良いということです。

DXコンサルティング会社の選び方

候補となるコンサル会社のカテゴリー

では、本題であるDXコンサルティング会社の選び方についてご紹介します。
まず候補として挙がるコンサルティング会社のカテゴリーをご紹介します。

カテゴリー 特徴
戦略系・総合系コンサルティングファーム l  戦略から実行支援の部分まで網羅してもらえる可能性が高いl  単価が中小企業に見合ないことが圧倒的に多い。よほど予算に余裕があるのであれば検討も可l  ちなみに筆者はこちらでDX支援もしていました
中小特化コンサルティングファーム l  中小企業の事例が豊富l  高難度なDXやITまで対応できるかというとクエスチョンマークの部分があるため、ファームが抱えている人材による
領域特化ベンチャー・ブティックファーム l  AIなど特定の領域に非常に強みl  DXは自社で進めることができるが、特定の領域のスキル・知見が足りない場合に活用するケースが多い
SIer l  システム構築の大部分は得意なので、実行部分は担ってくれるl  ある程度価格は高いことと、戦略部分が苦手であることが多い
リーパス l  リーパスは、DX戦略を構築できる人材からバックエンド・フロントエンドまでできる人材がいるので、一気通貫支援が可能l  価格もコンサルファームほど高くない

選ぶポイント

では、DXコンサル会社を選ぶ際のポイントについてまとめていきます。
ポイントは3つあります。

コンサル会社を選ぶ際の3つのポイント

①  そもそもDXが必要かどうかを見極めてくれる

②  DX全体像を描ける(戦略とテクノロジー両輪で支援してくれる)

③  各検討要素のプロが所属し、できる限り一気通貫性がある

①そもそもDXが必要かどうかを見極めてくれる

まず、貴社のビジネスの特徴や内外部環境、課題状況を分析したうえで、DXが必要かどうかを見極めてくれる会社かどうかは重要です。
特定の領域のシステムを売り込むだけでなく、貴社の課題に当てはめて考えてくれるかどうか、ということです。

ここを見極めないと、会社に最適でないシステムの初期投資・ランニングコストを支払い続けてしまうことになり、かつ効果も薄くなってしまいます。どの部分にDXが必要なのかをきちんと整理し提示してくれるような会社が良いでしょう、

②DX全体像を描ける(戦略とテクノロジー両輪で支援してくれる)

DXの領域をきちんと見極めたうえで、次にDXの全体像、つまりDX戦略を構築し、部門横断的に横軸を刺して伴走してくれるような会社が最良だと思います。
例えば、よくある事例としては、DXのデータ整備のために基幹システムを導入したが、各プロジェクトとのデータの整合性が取れず苦労してしまうことや、各部署への説明不足で、推進力が弱まるといったケースです。

DXで最適な支援体制は、以下の図のような形が最良と考えていますし、実際に私が支援した会社で成功してきたパターンです。

DX戦略を構築し、各部署横断にDX課題を抽出できるコンサルタントと、各課題を解決できるエンジニアが適切なコミュニケーションを取って、会社を支援していくスキームです。
コンサルタントだけでは、絵に描いた餅になり、エンジニアだけでは、視座や視野が狭くなり、部署ごとの整合性や経営の方向性との整合性が取れなくなることを回避することができるため、私が実施するときはこのチーム編成でやることが多いです。

トップダウンの戦略と各部署の課題の整合性を取りつつ、DXのアウトプットをエンジニア中心に出していく体制です。

よくある失敗パターンは、

1:戦略だけを描いて絵にかいた餅で終わるパターン
2:ボトムアップで進め、途中で方向性が迷子になるパターン

ですので、トップの戦略とボトムの成果の整合性を取り、課題を抽出・解決できるコンサルタントが必要です。

③各検討要素のプロが所属し、できる限り一気通貫性がある

DXの支援領域は前述の通り広く社内だけではとても対応が難しいです。
「DX戦略からバックエンド、フロントエンドまですべて支援できる体制」が必要となってきます。

それができる代表的な企業として大手コンサルティングファームが該当します。
ただし、注意点としては、金額の部分で高額になりやすい点です。(もちろんコンサルティングファームによりますが、中小企業が支払える額の桁がひとつくらい違うケースは少なくありません。)
SIerと推進することも一手ですが、一部分の解決しかできないこともあり、価格もある程度高いです。

そのような状況を経験してきたため、私たちはリーパスを立ち上げ、各分野のプロフェッショナルをそろえています。
リーパスの場合、DX戦略のプロ、バックエンドのプロ、フロントエンドのプロが参画していますので、会社の状況に合わせて、依頼することも可能です。ご興味ある方は、一度お問い合わせください。

いかがでしたでしょうか。今回はDXコンサルティング会社の選び方について述べました。
中小企業の社長、役員、情報システム部門、企画部門の方の一助になれれば幸いです。
また、中小企業診断士の方も参考にしていただき、今後のDXコンサルティングに活用していただければと思います。

この記事を書いたコンサルタント

中小企業診断士

中川 逸斗

同志社大学商学部商学科卒業後、IBMに入社し、広告、製造業、ゲーム会社などの大手企業の新事業構築、海外展開、IT戦略構築などのコンサルティング業務に従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社入社し、鉄道、ガス、小売、製薬などの大手企業の経営戦略構築、調達改革、経営再編、M&Aなどのコンサルティング業務に従事。 その後、Tech系スタートアップの取締役を経て、現在は日本自動調節器製作所の経営企画室の室長、戦略系コンサルティングファームのマネージャー、HAL経営コンサルティング合同会社の代表、LeaPath代表の4足の草鞋(兼業)で活動中。現在まで、大手企業から中小企業まで、計30社50プロジェクト以上のコンサル経験を持つ。また、中小メーカーの管理統括も同時に行っているため中小企業目線でのコンサルを得意とする。専門領域は経営戦略・DX・人事。

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