【解説】中小企業診断士の本質的な価値とは?

LeaPath代表の中川です。
今回は、中小企業診断士をはじめとした経営コンサルタントの本質的な価値について述べていきたいと思います。
本記事は、中小企業診断士や経営コンサルタントのみならず、依頼する側の中小企業の皆様にも是非ご覧いただきたい記事です。

皆さんも、経営コンサルタントの価値について考えたことはあるかもしれません。

経営コンサルティングって、そもそも何のために必要?
経営者だって十分に色んな事考えて経営しているし、社員も色々な現場課題を改善するために日々頑張っているのに、なぜ必要なのか?

もしかしたら、このようなことを考えたことがあるかもしれません。

診断士やコンサルタントは、その業界のプロや社内の事を知り尽くしている方々に対して提案していくわけですから、そもそもの必要価値をよく問われる業種であることは否めません。しかしながら、コンサルタントの仕事は未だになくなっていませんし、むしろ増加傾向にあります。
これはなぜなのでしょうか?
そこで、経営コンサルタントの価値とは何なのか?という問いを、事業会社の一員としてもコンサルを活用しつつ、コンサルファームでも仕事をしている筆者が双方の立場を鑑みたうえで、解き明かしていきたいと思います。

前提

少なくとも私が勤めていたコンサルティング会社では、あまり言われたことはないのですが、中小企業診断士の世界では、「伴走支援」という言葉がよく使われます。
この「伴走支援」なのですが、一部の戦略系のコンサルティングを除き、中小企業診断士だけでなく、あらゆるコンサルティングファームでも伴走・実行支援は行っています。つまり、伴走して実行することは「当たり前」であるため、コンサルティング会社は、わざわざ標榜していないとも言えます。
今回この記事を書こうと思ったのも、この「伴走支援」という言葉が独り歩きしてはいけないと考えたことも1つのきっかけです。
本記事を読んでいただければ、「伴走支援」だけではない、中小企業診断士の本来の役割が見えてくると思います。

中小企業診断士や経営コンサルタントの本質的な価値

中小企業診断士や経営コンサルタントの本質的な価値は以下の5つであると考えています。

中小企業診断士や経営コンサルタントの本質的な価値

①    複雑な情報や課題の整理

②    社内調整(中堅会社以上)

③    “合意できる確からしい何か”の提供

④    知見の提供

⑤    アクション支援と相談

①複雑な情報や課題の整理

複雑な情報や課題を整理することは、本質的な価値のひとつであり、あらゆるコンサルティング案件に共通して求められるものです。
いくつもの外部環境・内部環境、社長の意見、各部の意見、その意見に内包された人の感情など、多くの複雑な情報をうまく整理して、かつ伝達していく必要があります。
中小企業の皆様におかれましては、コンサルタントを活用する場合は、社内で対応できないような複雑な情報を整理し、分かりやすく伝達してくれるか?というのは、ひとつコンサルタントを評価する軸として持っておかれると良いかと思います。

一方、中小企業診断士や経営コンサルタントの方は、複雑な情報の因果関係の整理や構造化する力は必須能力であるとご理解いただければと思います。
逆にこの能力があれば、仮に専門知識や経験が不十分でも、あらゆるプロジェクトに対応できる可能性が高まります。
たまに大手コンサルティング会社で経験が少ない若手コンサルタントが大活躍しているケースがありますが、大抵の場合、この能力が飛びぬけています。

②社内調整(中堅会社以上)

いわゆるPMO(Project Management Office)と言われる社内調整役も、特に企業規模が中堅以上の会社の場合に求められることが多いです。
事業会社で働いている方は良くわかると思いますが、日本企業は特に、部門間での軋轢や派閥政治の問題、頭でっかちな方などが、あらゆるところに存在・出没します。
前向きにプロジェクトを推進しようとしていても、建設的でない反対意見(建設的な反対意見は歓迎すべき)などがよくあります。
私の経験では、その場合、どちらかが悪いというよりもコミュニケーションミスによって発生していることが少なくありません。
例えばですが、

プロジェクトマネージャーが口下手で、他部署に端的にかつ論理的に要件を伝えきれていない
プロジェクト推進役が保身的で、情報を他部署に出さない
プロジェクトを推進する部署と他の部署の仲がそもそも悪い
プロジェクト推進部署が口頭で他部署に伝達するだけで、プロトコルとなる絵を描くことができない

という事例が今までありました。中小企業では少ないかもしれませんが、中堅・大手企業ではこの社内調整のニーズは少なからずあります。
「PMOはコンサルではない」という方もいらっしゃいますが、プロジェクトを円滑に進めることもコンサルタントの仕事の範疇ですので、PMOの能力はコンサルタントとしてベーススキルとして必要かと個人的には思います。
PMOのスキルを一言で言うと「プロアクティブさとコミュニケーション能力」です。
全体を俯瞰して、積極的に必要なことを伝達するなど周りを気遣い、自ら働きかけることができるプロアクティブなマインドと、傾聴力・ロジカルな発言力・批判的なことを建設的に伝達できる能力・資料上で分かりやすく伝える力など、総合的なコミュニケーション能力が必要になります。

中小企業の皆様におかれましても、社内調整が必要な場面というのは出てくることもあろうかと思いますので、社内調整でコンサルタントを活用する場合は、
そのコンサルタントが人に嫌われない素養があるか、
コミュニケーション能力が高いか、
プロアクティブか、
というのは、ひとつコンサルタントを評価する軸として持っておかれると良いかと思います。

③“合意できる確からしい何か”の提供

皆様は、日本のコンサル市場成長率が高いことはご存知でしょうか。
コンサルティング業界の全世界の推定市場規模は、およそ10兆円から20兆円と言われています。
うち米国の市場規模は6兆円から10兆円、ドイツが1兆円から2兆円となって、その大半を占めています。
一方、ユーロモニター社の調査結果では、日本の推定市場規模は、2016年で1800億円から3000億円程度と言われていましたが、2018年にはIDC Japanの調査によると前年比7.8%増で4000億円を超え、2023年には1兆円前後になっています。

当然、デジタル領域のコンサルティングが増加したことも、大きな要因のひとつですが、私は日本企業が外部のコンサルタントを使うのは、

「合意できる確からしい何か」

が必要であると考えているからだと思います。日本企業は、海外に比べても意思決定が遅く、その要因として合意形成が大変であるためです。

役員や管理職が日々喧々諤々議論を交わして意思決定をしてくれているのですが、そこに客観的データや美しく整理された戦略論、緻密に計算されたあらゆる市場や管理会計のデータがあれば、当然意思決定は早くなります。
診断士やコンサルタントは、客観的事実を積み上げ、洞察し、何かしらの解を提示することが仕事ですので、意思決定を早めるための「合意できる何か」を提供してくれることが多いです。

そのようなことからも、日本でのコンサルタントの位置づけというのは、新たな知見のみならず、合意できるものを、顧客のニーズに応じて、うまく取りまとめるスキルが必要になってきます。①の複雑な情報や課題の整理と似ていますが、整理したうえで、どううまく見せるのか、伝えるのかということが、この価値の論点です。

中小企業の皆様におかれましては、精度が高く迅速な意思決定がしたい時に、コンサルタントを活用する場合は、そのコンサルタントが合意形成できる資料を作成できるかというのは、ひとつコンサルタントを評価する軸として持っておかれると良いかと思います。
具体的には「提案書の質」を見れば、ある程度判別できると思います。

一方、中小企業診断士や経営コンサルタントの皆様は、前述した複雑な情報の因果関係の整理や構造化する力は必須能力であることに加え、それをどう見せて、伝えたら顧客が意思決定できるかという資料の見せ方、伝え方が重要なスキルポイントとなってきます。
100枚くらいの資料を作る方もいますが、基本そんなに大量の報告書は、論点がブレブレなので、見る方も大変です。
意思決定に必要な情報を美しく20~30ページにまとめて報告できる能力が必要になります。

この能力を身につけたい方は、以下の動画を推奨します。
>>一流の資料の作り方(有料コンテンツ)

④知見の提供

中小企業診断士やコンサルタントの価値として、まず皆さんが思い浮かべるのが、この「知見の提供」ではないでしょうか。
皆さんが思い浮かべた通り、この知見の提供も重要な価値のひとつとなります。

中小企業におけるコンサルティングの知見は、以下2点です。

① 経営に必要な考え方の知見
② 業界他社事例を含む、コンサルタント独自の知見

①は経営戦略、財務、人事、IT/DXなどの基本/応用の知識を提供するものなので、皆さんイメージしやすいと思います。
② は、中小・中堅企業の社長・役員の方とお話していると、「他社はどうしているの?」ということをよく聞かれます。
当然、他社情報をそのまま出すわけにはいきませんから、一般論化したうえで、というのが前提ですが、コンサルタントが経験してきたプロジェクトの成功要因や失敗要因、効果的な施策などを伝えると非常に喜ばれることも多いです。①は、勉強熱心な社長・役員の方であれば基礎知識は持っていることも少なくないため、②の方が顧客価値は高いな、という印象があります。

②は、年齢というよりも、コンサルティングの実戦経験をどれだけ踏んできたか、成功や失敗をどれだけしてきたか、という経験値に左右されますので、中小企業の皆様におかれましては、例えばリーパスの無料記事や動画をご覧いただいて、そのコンサルタントの経験値や知見・ノウハウを事前に確認いただければと思います。
一方、中小企業診断士をはじめ、コンサルタントの方は、ひとつの手段としてリーパスを活用し、記事や動画で自身の知見・ノウハウを訴求することもできますので、是非ご活用ください、

リーパスの動画ページはコチラ
>>リーパス動画コンテンツページ

⑤アクション支援と相談

中小企業へのコンサルティングにおいては、知見の提供だけでなく、アクション支援や相談まで行う必要があります。
これがいわゆる「伴走支援」です。
知見を提供したうえで、各種分析・診断を行い、顧客が明日からでも実行できるアクションプランを作り、そのアクションプランの計画・実行・チェック・改善までを、一緒に行っていき、絵に描いた餅で終わらせないコンサルティングが中小企業に求められますし、私も好きです。
「相談」については、中小企業の経営者がコンサルタントに「気軽に相談できる間柄」を構築し、経営者の良きパートナーとして、経営改善・改革に共に取り組んでいくという価値です。
経営者は従業員に比べ孤独であることが多いですから、相談できる相手としての役割は求められることが多いです。(中堅・大手の場合は、そのようなケースはあまり発生しないことも多い)
アクション支援をしていく中で、うまくいかないことも多々出てくるため、経営者と相談(伴走)しながら、同じベクトルで経営を行っていくことが重要です。

ただ、ひとつ言いたいのは、中小企業診断士や経営コンサルタントの価値というのは、「伴走支援」だけに留まらせると、非常に視野が狭くなるということです。
伴走支援は前提として、前述した


・「複雑な情報や課題の整理」
・「社内調整」
・「合意できる何かの提供」
・「知見、特に経験に依拠する知見」


を組み合わせて、初めてコンサルタントとしての価値を増幅させることができます。
ただ寄り添っているだけのコンサルタントだけでは価値はなく、自らの知見から時には厳しいことも言い、社内調整しながら情報を整理し、意思決定の役に立つということが重要です。

いかがでしたでしょうか。今回は中小企業診断士や経営コンサルタントの本質的な価値について述べました。
中小企業の皆様、中小企業診断士の皆様双方にお役に立てる記事になっていれば幸いです。

この記事を書いたコンサルタント

中小企業診断士

中川 逸斗

同志社大学商学部商学科卒業後、IBMに入社し、広告、製造業、ゲーム会社などの大手企業の新事業構築、海外展開、IT戦略構築などのコンサルティング業務に従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社入社し、鉄道、ガス、小売、製薬などの大手企業の経営戦略構築、調達改革、経営再編、M&Aなどのコンサルティング業務に従事。 その後、Tech系スタートアップの取締役を経て、現在は日本自動調節器製作所の経営企画室の室長、戦略系コンサルティングファームのマネージャー、HAL経営コンサルティング合同会社の代表、LeaPath代表の4足の草鞋(兼業)で活動中。現在まで、大手企業から中小企業まで、計30社50プロジェクト以上のコンサル経験を持つ。また、中小メーカーの管理統括も同時に行っているため中小企業目線でのコンサルを得意とする。専門領域は経営戦略・DX・人事。

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