中小企業診断士が語る、2次試験と養成課程はどちらがおすすめか

1.はじめに〜筆者の自己紹介

「企業の未来にワンポイント!」中小企業診断士・ドットプロジェクト代表の荒木です。
筆者は現在、大阪の某農業機械メーカーに勤めながら、中小企業診断士業務を行う「副業系診断士」です。

今回は、難関国家資格である中小企業診断士に合格するための2つのルート「2次試験」と「養成課程」について比較解説してみました。中小企業診断士に興味のある方、受験生の方向けにまとめておりますのでぜひご参考いただければと思います。

はじめに、筆者の受験歴をご紹介します。筆者は2次試験を2度不合格となった後、大阪経済大学中小企業診断士養成課程に合格&修了し、中小企業診断士に登録しました。いわゆる「養成課程組」です。

【筆者の受験歴】
・2019年8月 本格的に勉強開始
・2020年8月  一次試験4科目合格
・2021年8月  一次試験 合格
・2021年11月 二次試験 不合格(一回目)
・2022年10月 二次試験 不合格(二回目)
・2022年12月 大阪経済大学中小企業診断士養成課程5期生 合格
・2024年2月  大阪経済大学中小企業診断士養成課程5期生 修了
・2024年5月  中小企業診断士 登録

残念ながら、SNS界隈では一部「養成課程組はレベルが低い」「金で資格を買っている」などと養成課程組を蔑む声があります。
しかし、当然のことながら中小企業診断士のレベルは「優秀な受験生」であることと同義ではありません。登録を受ければ、どちらのルートだろうと同じ中小企業診断士です。

最も重要なのは、中小企業診断士のスタートラインに立つことです。本稿では、筆者の約5年間の受験経験から2つのルートの特性を紹介しています。受験生の皆様がそれぞれのライフプランにあったルートを選択する一助となることができれば幸いです。

2.中小企業診断士の登録までの流れ

まずは中小企業診断士受験のおさらいです。
中小企業診断士の登録を受けるには、「2次試験合格と実務従事」または「中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了」する必要があります。多くの場合「2次試験合格と実務従事」が一般的ですが、最近は登録養成課程機関も増加していることから、養成課程の選択肢も広がりつつあります。

3.2次試験と養成課程の比較

それでは次に以下の内容についてそれぞれ実際に比較していきます。

①難易度と合格率
②取得にかかる費用
③働きながらの取得のしやすさ
④実践力
⑤独立のしやすさ

①難易度と合格率

中小企業診断士試験は一般的に難関国家資格と呼ばれていますが、実態はどうなのでしょうか。以下、中小企業診断協会の試験統計資料を覗いていきましょう。
一次試験は絶対評価です。平成では一次試験の合格率は20%前後で推移していましたが、令和に入り合格率は30%前後で推移しています。また受験者数の増加も目立ちます。中小企業診断士の認知度が高まってきたことや、コロナ禍で資格取得希望者が増えたことが背景にあるかもしれません。

二次試験は相対評価です。その合格者数は各年度ともほぼ一定で、19%前後で推移しています。一次試験を突破すると、一次試験合格年度と翌年度の2度二次試験の受験資格があります。
二次試験の難しさは、「模範解答が公表されないこと」にあります。資格学校の解釈も一律ではなく、対策が立てづらい側面があり、ここが難関資格と呼ばれる一番の所以だと思います。また、ここで合格できなければまた一次試験からやり直しとなるため、精神的にも体力的にもタフさが要求される試験といえます。

他方、養成課程に通った場合、出席日数や科目毎の評価などをクリアできればほぼ確実に中小企業診断士になることができます。「中小企業診断士のスタートラインに立つ」ためには最も確実な道といえます。
もちろん、養成課程に通うためには書類選考・面接を突破する必要はあります。筆者が受講した大阪経済大学第5期の合格率は約30%でした。複数機関の併願も可能なので、現状、二次試験の合格率よりは高いと言えます。ただ、前述の通り、中小企業診断士試験の受験者数が増えた関係から、今後倍率は高まっていくかもしれません。

②取得にかかる費用

この章では、筆者の受験経験から受験のためにかかった費用を比較します。

2次試験受験と養成課程に実際にかかった費用比較
筆者の2次試験費用 筆者の養成課程費用(大阪経済大学)
・診断士ゼミナール 約120,000円
・テキスト(過去問集+ふぞろいな合格答案)約6,000円
・資格学校模試 約9,000円
・カフェ代 500円 × 約180日 = 約90,000円
・入学金+受講料 2,000,000円
・専門教育訓練給付金 ▲560,000円
合計 約242,800円 合計 1,440,000円

2次試験では、私の場合カフェをよく利用していた分場所代がかかっていますが、一般的には10万〜30万円程度だと思います。

その一方で、養成課程は機関によって異なりますが、一般的に約200万~300万円の費用がかかります。

私も実際に恩恵を受けたように、機関によっては専門教育訓練給付金の対象となるため、出費を抑えることも可能ですが、2次試験ルートに比べると決して安い額ではなく、受講に際しては強い決意が必要でしょう。

③働きながらの取得のしやすさ

中小企業診断士志望者の多くが企業勤めしながら受験勉強をしています。本章では働きながら取得するにはどちらのルートのほうが取得しやすいかを比較します。

2次試験ルートの評価項目は「テストでの相対評価」ですので、試験までの過ごし方は自由です。勉強時間も自身でコントロールできるため、2次試験ルートの場合はタイムマネジメントしやすく、働きながら勉強に励みやすいです。

一方、養成課程ルートの評価項目は「授業への出席率」です。
大阪経済大学の養成課程で定められていたのは「出席率90%」でした。この条件をクリアしなければ、卒業要件を満たすことができません。10%しか欠席が許されないため、出張が多いなど欠席が多くなる可能性がある方は働きながらの取得が難しいかもしれません。

先に紹介した養成課程機関の中には平日昼開校のカリキュラムを組んでいる少なくありません。養成課程を選ぶ際は、説明会に必ず参加して働きながら通うことができるかを判断してください。

働きながらの取得のしやすさ
  2次試験ルート 養成課程ルート
評価項目 ・テストでの相対評価 ・出席率
※成績が著しく低い場合は卒業できない場合もありますが、ごく稀なケースです。
取得のしやすさ △(欠席が多くなってしまう人には不向き)

④実践力

「中小企業診断士に登録する」ことはあくまでもスタートラインにすぎません。その後、業務を行っていくためには企業診断の実践力が問われます。

2次試験ルートの場合、実務従事・実務補修を経て登録となりますが、ほとんど企業診断を経験しないままスタートラインに立つことになります。試験をクリアした後は地域の中小企業診断士協会に所属し、自ら経験値を上げていかなければなりません。

一方、養成課程ルートの場合、一線で活躍する中小企業診断士の先生からそのノウハウをインプットすることができます。
また、診断実習も複数回準備されており、インプットした知識をアウトプットする作業を繰り返し経験することができます。
大阪経済大学の養成課程では5度の実習があり、延べ4か月ほど企業診断の実践を行います。養成課程を修了する時にはすでに、5社の企業診断経験があることは、かけがえのない自信となります。

実践力
2次試験ルート 養成課程ルート
短期実務補修のみ 一線で活躍する中小企業診断士の先生からのノウハウ

4〜5ヶ月にわたる5回の診断実習

⑤独立のしやすさ

中小企業診断士として独立を考える場合、多くの仕事をこなしていくために診断士同士のコネクションを深め、案件に応じたチーム編成力が鍵となります。

2次試験ルートの場合、中小企業診断士として登録後はいろいろな集まりに顔出しして、診断士内でのコネクションづくりが必要になります。ダブルライセンス保持者でない限り、独立を視野に入れれば診断士内への営業活動に一定の時間を割く必要があります。

一方、養成課程ルートの場合、養成課程の先生、先輩、同期生と深いつながりを持つことができます。
実際、全国の中小企業診断士と企業をつなぐマッチングサービス、「LEAPath(リーパス)」も同期生とのつながりから生まれたコミュニティです。困ったときに相談できる頼もしい仲間と出会えることは、養成課程ルートの一番の強みだと感じています。

独立のしやすさ
2次試験ルート 養成課程ルート
実践力と診断士同士のコネクションが不足しやすい 養成課程の先生や先輩など縦のつながり

20人以上の同期との横のつながり

4.まとめ
【2次試験ルート&養成課程ルート比較表】

ここまで「2次試験ルート」と「養成課程ルート」を比較してきましたが、筆者としては結論、

「養成課程ルート」

をおすすめします。
まずは「合格率」がほぼ100%であること。先に述べた通り、中小企業診断士試験は中小企業診断士に登録し、スタートラインに立つことが重要です。採点基準が公表されておらず、しかも合格率が19%と低い2次試験を受験するより確実な道といえます。

次に「実践力」がつくこと。中小企業診断士として活躍されている先生方と企業診断を複数回行うことで、経験を積んだ状態で中小企業診断士に登録できます。

最後に「在学中に仲間ができる」こと。先生方、先輩方、同期生と強いつながりをもつことができることはかけがえのない財産となります。

「費用がかかる」「働きながら取得しづらい」という制約はあるものの、それらの条件をクリアできる人は是非「養成課程ルート」を検討してみてはいかがでしょうか。

5.エピローグ

筆者は、決して「優秀な受験生」ではなく、大阪経済大学養成課程入学までに既に3年の月日を受験勉強に費やしています。評価基準が公開されていない2次試験対策のコツがつかめず、不安な日々を過ごしていました。また、妻と幼い子供2人に負担をかけ続けていることに強い自責の念がありました。

2度目の2次試験に合格できなければ、これまでかけてきた時間が無駄になってしまう。何か確実な方法はないか。すがる思いでネット検索していた時、大阪経済大学の養成課程を知りました。

大阪経済大学の養成課程は働きながら通うことができるよう、カリキュラムが配慮されています。また、専門教育訓練給付金の対象であり、費用面も抑えることができます。
何より、面接に合格できれば、ほぼ100%中小企業診断士になることができる点が魅力的でした。「家族に迷惑をかけたくない」「確実にスタートラインに立ちたい」と考えていた筆者にとって、まさに理想的でした。

その後、2度目の2次試験は不合格となりましたが、大阪経済大学の養成課程には無事に合格し、2024年5月に中小企業診断士に登録することができました。一次試験から出直しのはずでしたが、今中小企業診断士として養成課程の仲間と組織を作り、この記事を執筆しています。

最も重要なのは、中小企業診断士のスタートラインに立つことです。

本稿で養成課程の魅力を知っていただき、皆様の受験の励みになれば幸いです。

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