経営戦略を作る上で必ず押さえておきたいフレームワークについて

音丸(同)代表の今井です。
弊社は「想いを世界に」をビジョンに、海外展開支援を通して日本企業のグローバル化を目指しています。今回は経営戦略の作成において重要なフレームワーク9選について解説します。

1.概要

近年、経営環境の変化が激しく、不確実性が高い時代の中、経営戦略の見直しが必要な機会が増えてきています。しかし、一貫性のない経営戦略では絵に描いた餅になりやすく、ステークホルダの信頼が得られなかったり、社員への納得感が得られず社内浸透が図れなかったりします。ではどのように経営戦略を策定すれば良いのでしょうか?
今回は経営戦略でポイントとなるフレームワークを体系的に押さえることで、戦略に一貫性を持たせ、社内外に納得してもらえる経営戦略の策定を目指します。

2.一貫性のある経営戦略はなぜ必要なのか?

経営戦略が必要なのは「同じ方向に人を動かすため」

そもそもなぜ経営戦略が必要なのでしょうか?
経営者は達成したい目的のために従業員や外部の人に動いてもらうことが必要になります。
しかし「こう動いてほしい」と頭で思っても、うまく伝えることができなければ、納得感や信頼を得られず同じ方向には動いてくれません。経営者と従業員が近く、頻繁にコミュニケーションを取っていれば、方向性を理解してくれて行動してくれることもありますが、会社規模が大きくなったり、次世代に継承するタイミングになったりすると、その想いを全ての人に伝えるのが難しくなってきます。

経営戦略を策定することで、企業の目標を全ステークホルダに対して明確化することができ、これにより社内外の関係者が同じ方向性を向いて動くことができます。ただし、経営戦略に納得感が無いと人は動きませんので、納得感が得られる経営戦略を策定することが必要です。

図1 経営戦略の策定で目標を明確にする

経営戦略から個人の業務まで一貫性を保つことで納得感を得る

では人に動いてもらうために、どのように納得感が得られる経営戦略を策定すれば良いのでしょうか?

それぞれの従業員の行動は各個人が担う業務内容により決められますが、この業務内容が経営戦略に紐づいていないと、「なぜこの業務をしているのか」という納得感を得ることができず、会社の方向性と違う想いで行動してしまうことがあります。
そこで、以下の図2のように経営戦略を

①企業戦略
②事業戦略
③機能戦略

の3つのレベルに分解します。

図2 経営戦略策定プロセスの全体的見取り図

大まかにいうと、

「①企業戦略」では会社の方向性を決め
「②事業戦略」ではどうやって他社と差別化するかを検討し、
「③機能戦略」は営業、業務、製造、財務など各部門に落とし込んだ戦略

となります。
企業戦略→事業戦略(競争戦略)→機能戦略(部門別戦略)→各個人の業務、の流れで上から落とし込んでいくことで上位レベルの戦略から業務内容まで一貫性を持たすことができます。
こうすることで経営者も従業員に説明がしやすく、従業員も納得感を得やすくなります。
戦略から落とし込まずに場当たり的に業務を依頼してしまいがちですが、上位概念の戦略を策定することにより、「何の目的のために誰が何をすべきかが明確」になり、明確な目標の元に業務に取り組むことができるため、社員のモチベーションにもつながります。

3. フレームワークを戦略レベル別に分類して体系的に押さえる

フレームワークを知ってる経営者やコンサルタントはたくさんいらっしゃいますが、それを実際の現場で使いこなすには「どのタイミングで、何のフレームフレームワークを使うべきか」体系的に押さえておく必要があります。

そこで図3のように経営戦略のレベルで切り分けて体系的に押さえておくことで、その戦略レベルに合ったフレームワークを活用して効率的に戦略を策定することができます。また、各戦略レベルにおいてフレームワークを網羅しておくことで検証すべきポイントの抜け漏れ防止にも繋がります。

図3 戦略レベル別フレームワーク一覧

4. 企業戦略(成長戦略)で押さえたいフレームワークは3つ

(1)SWOT分析

SWOT分析は、成長戦略、競争戦略、機能戦略のいずれにも関連する包括的なフレームワークです。

具体的には図4のように企業の内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)に切り分けてそれぞれ分析することで、会社の現状を内部と外部から把握し、戦略的意思決定を支援するのに効果的なフレームワークです。

図4 SWOT分析例

(2)アンゾフの成長マトリックス

アンゾフの成長マトリックスとは、企業が成長戦略を検討する際に使用されるフレームワークです。イギリスの経営学者イゴール・アンゾフによって提唱されました。

具体的には図5のように4つの成長戦略から次にどこに進むべきか方向性を決めます。
4つの成長戦略は、「製品」と「市場」の2軸を設定し、それぞれをさらに「既存」と「新規」に区分します。それらを掛け合わせることで、以下のような戦略名がつけられています。

図5 アンゾフの成長マトリックス

(3)PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析

PPM分析は縦軸に市場成長率、横軸に市場占有率をとり、市場シェアの高低と市場成長率の高低の組み合わせにより、図6のように「負け犬」「金のなる木」「花形」「問題児」という4タイプに事業や商品、サービスを分類します。
これにより事業や商品が市場に対してどの立ち位置にあるのかが明確になり、投資撤退の判断や経営資源をいかに配分するかについての検討が可能となります。

図6 PPM分析

5. 事業戦略(競争戦略)のフレームワーク3選

(1)ポーターの競争戦略

ポーターの競争戦略では、企業が市場で競争優位を確立するため企業が選択するべき基本戦略として図7のように

①全方位戦略
②集中戦略
③差別化戦略
④模倣戦略

の4つに分類します。
これにより自社の競争ポジションを明確にし、競合他社に打ち勝ち業界の中で競争優位を築きます。

図7 ポーターの競争戦略

(2)VRIO分析

VRIO分析は、企業が持つリソースや能力の競争優位性を評価するためVRIOは、

①Value(価値)
②Rarity(希少性)
③Imitability(模倣困難性)
④Organization(組織)

の4つの要素の頭文字を取ったもので、それぞれの要素に基づいて企業のリソースや能力が競争優位をもたらすかどうかを評価します。

図8 VRIO分析

(3)3C分析

3Cは、

Customer(顧客)
Competitor(競合)
Company(自社)

の3つのCを分析します。
自社と外部要因を照らし合わせることにより市場環境を総合的に理解し、競争優位を築くための具体的な戦略を立てることができます。

図9 3C分析

6. 機能戦略(部門別戦略)のフレームワーク3選

(1)STP分析

STP分析は

Segmentation(セグメンテーション)
Targeting(ターゲティング)
Positioning(ポジショニング)

の3つの頭文字を取った略称です。これにより自社の製品やサービスがどの市場セグメントに最も適しているかを明確にし、競合他社と差別化するための戦略を策定することができます。

図10 STP分析

(2)4P分析

4P分析は

製品(Product)
価格(Price)
流通(Place)
プロモーション(Promotion)

の4つのPの頭文字を取ったものです。
この4つを分析することで、自社製品・サービスと競合品との違いを把握し「何を、いくらで、どこで、どのように」販売するかを決定することができます。

図11 4P分析

(3)バリューチェーン分析

バリューチェーン分析では、企業が製品やサービスを市場に提供する際の一連の活動を分析し、それぞれの活動の強みや弱みを把握します。これにより各活動においてのコスト削減や効率化、付加価値の向上を目指すことができます。

図12 バリューチェーン分析

7. まとめ

今回は経営戦略を作る上で必ず押さえておきたいフレームワークについて解説しました。
フレームワークを闇雲に覚えただけでは、どのタイミングでそのフレームを使えば良いかわからなくなってしまいます。フレームワークを戦略レベルに分けて体系的に使うことで、経営戦略から個人の業務まで繋がった、一貫性のある戦略を立てることができます。体系的なフレームワークの知識を上手く活用して、人を動かす経営戦略を立てましょう。

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