【徹底解説】事業再構築補助金って何?条件やいつまであるのかについて

こんにちは、中小企業診断士の小山と申します。
私はこれまで補助金申請に関わる仕事を長くやってきましたが、今回そんな私が、事業再構築補助金をテーマに「事業再構築補助金とは何か?」というところから、実際に補助金が採択されるためのポイント等についてもお話ししていきたいと思います。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰・地域サプライチェーン維持・強靱化又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的として開始された補助金です。

補助金の採択率

第11回公募の応募件数は9,207件に対し、採択された件数が2,437件で、採択率は26.5%となり採択件数、採択率ともに過去最低となりました。参考までに、第10回公募の採択率は約48%であり、11回目以降の公募から急激な厳格化が見られます。

(出典:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金第10回公募の結果について」

(出典:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金第11回公募の結果について」

制度概要

12次公募からの主な変更点

事業再構築補助金は以前より、申請者の使途の適正化が必要であったため、行政事業レビューが行われました。
第 12次公募より、事業者にとって改悪とも捉えられる変更が加えられており、申請を考えられている方はこちら要注意です。

(1)事前着手制度の原則廃止

事業再構築補助金の事前着手制度とは、補助金の交付決定前に発生した経費について補助対象とすることを認める制度です。
つまり、緊急を要する事業者が、交付決定を待たなくとも、事前に発注した設備やシステムに対しても経費として認められる制度でした。しかし、コロナ禍であることを前提としていた事業再構築補助金が、5類感染症以降に伴い、特例として認めてきた事前着手制度はできず、補助金交付決定以降の経費しか認められなくなりました。

ただし、経過措置として、以下の場合に限り、補助金の交付決定前であっても事務局から事前着手届出が受理された場合は、令和4年12月2日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができます。

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①第10回、第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12次公募において、コロナ回復加速化枠(通常類型)又はコロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請する場合
②第10回公募において、サプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12次公募において、サプライチェーン強靱化枠に申請する場合
==

これらの場合においては、例外的に令和4年12月2日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができますが、この経過措置をもって事前着手制度は完全に廃止されると公表されています。

(2)審査の厳格化

採択審査におけるAIでの重複率確認による類似案件排除が強化されます。
事業計画書に記載されている市場分析を実施した時点では、当該申請者に優位性が認められた場合でも、実際に申請者が事業を実施する段階においては、その優位性が消滅しているといった可能性もあります。

したがって、特定の期間に、類似のテーマや設備等に関する内容の申請が集中して行われている場合には、一時的流行(トレンド)による過剰投資誘発の恐れがあるため、別途審査が行われることとなります。(閾値の見直しや範囲の拡大により、同じ計画書の使いまわしを防止)

(3)事業化状況報告が四半期ごとに義務化

また、第12次公募より、採択事業者に義務付けられている事業化状況報告が、1年ごとから四半期ごとに変更されます。

事業化状況報告とは、補助事業の成果をシステム上で申告する手続き(要はちゃんと補助事業を行なっているかを報告する作業)のことで、従来は補助事業終了から5年間、初回を含めて計6回でした。
しかし、第12次公募から事業化状況報告は計6回から24回に増加し、採択者の事務負担は大幅に増えます。
事業化状況報告を怠ると補助金を返還しなければならないため、とくに事務の戦力に乏しい小規模事業者は注意が必要です。

(4)口頭審査の導入

そして第12次公募より、一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて口頭審査が行われます。
一定の基準については開示されていませんのでどのような選定理由かは不明ですが、口頭審査の対象になったにも関わらず、受験がなかった場合は不採択となりますので注意が必要です。

詳細については、後述する採択されるためのポイント、口頭審査にて詳しく記載します。

12次公募の全体像

以下に、再構築補助金の類型、補助上限金額、補助率といった全体像を記載します。

(出典:経済産業省 中小企業庁「事業再構築補助金第12回公募の概要」

12次公募における共通要件

事業類型ごとの補助対象要件に加えて、共通の要件が設けられています。

要件(1)事業再構築指針

事業再構築指針に示された下記の6類型いずれかに該当する必要があります。

事業再構築指針の6類型

①新市場進出
②事業転換
③業種転換
④事業再編
⑤国内回帰
⑥地域サプライチェーン維持・強靱化

①新市場進出

1.新たな製品・商品・サービスを提供すること、又は提供方法を相当程度変更すること
2.新たな市場に進出すること
3.新規事業の売上高が総売上高の10%以上になること(付加価値額の場合は、15%以上)
1〜3を満たすこと。

②事業転換

1.新たな製品・商品・サービスを提供すること
2.新たな市場に進出すること
3.主要な業種が細から中分類レベルで変わること
1〜3を満たすこと。

③業種転換

1.新たな製品・商品・サービスを提供すること
2.新たな市場に進出すること
3.主要な業種が大分類レベルで変わること
1〜3を満たすこと。

④事業再編

会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかを行う。

⑤国内回帰

海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備する。

⑥地域サプライチェーン維持・強靭化

地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給に不足が生じ、又は、生ずるおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備することをいう。

要件(2)認定経営革新等支援機関の確認

金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は、資金提供元の金融機関等による事業計画の確認を受ける必要があります。金融機関等からの資金提供を受けずに自己資金のみで補助事業を実施する場合のみ、認定経営革新等支援機関による事業計画の確認で要件を満たします。

12次公募における枠(事業類型)

12次公募における枠としては大きく以下の5つに分けられます。

公募における枠(事業類型)

(1)成長分野進出枠(通常類型)
(2)成長分野進出枠(GX進出類型)
(3)コロナ回復加速化枠(通常類型)
(4)コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
(5)サプライチェーン強靱化枠

(1)成長分野進出枠(通常類型)

成長分野進出枠は、過去の事業再構築補助金で設計されていた、成長枠・グリーン成長枠・産業構造転換枠が通常類型とGX進出類型に分類されました。

ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援するために作られた枠組みです。

(2)成長分野進出枠(GX進出類型)

ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」 14 分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援するために作られた枠組みです。ちなみに、 14 分野については、国が2050年カーボンニュートラルに伴う成長戦略を描き、経済産業省が中心となり高い目標を掲げ具体的な見通しを示した実行計画です。
(参照:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html

(3)コロナ回復加速化枠(通常類型)

コロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援するために作られた枠組みです。

(4)コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援するために作られた枠組みです。

(5)サプライチェーン強靭化枠

サプライチェーン強靱化枠では、ポストコロナに対応した、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を促進します。他枠との要件や対象が異なるので注意が必要です。

ポストコロナに対応した、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を促進するものです。サプライチェーン強靭化枠は、成長分野進出枠やコロナ回復加速化枠と要件や対象となる経費が異なるので必ず公募要領を確認しましょう。

申請準備について

準備するもの

GビズIDプライムのアカウント

申請は電子申請システムのみで受け付けています。申請には、「GビズIDプライムアカウント」が必要です。
ID取得には一定の期間を要しますので、まだ取得していない方は、早めにGビズIDプライムアカウントの取得手続きを行いましょう。

<GビズID>
https://gbiz-id.go.jp/top/

提出書類

提出書類は、事業計画書をはじめ、申請する枠に応じてそれぞれ準備が必要になります。
再構築補助金事務局より事業再構築補助金添付書類確認シートが公開されており、こちらで確認が可能です。
(参照URL:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/download/syoruikakunin012.pdf

スケジュール

第12次締切分 公募スケジュール

※現在第12回公募については終了しています。13回目公募につきましては現在未定となっております。(2024/9/30時点)
以下、12回における全体の流れについて、今後の参考として記載させていただきます。

公募開始 :2024年4月23日(火)~
電子申請受付:2024年 5月20日(火)~
申請締切 :2024年 7月 26日(金)18:00まで【厳守】

全体の流れ

①必要書類を期日までに提出
②採択決定通知
③交付申請
④補助事業開始
⑤実績報告
⑥補助金の請求と受領
⑦事業化状況報告

①必要書類を期日までに提出

上記記載の書類を申請締切日までに提出することが必要です。
申請最終日は混み合うことが予想されるため、適切なスケジューリングを行うよう段取りが必要です。

②採択決定通知

再構築補助金が採択されたら、公式ホームページ上に採択者一覧が公表されます。
また、各申請者は個別通知を受取り、採択結果に関する通知が登録したメールアドレスに送付されます。

③交付申請

事業計画書の内容が、①の書類で審査されるのに対し、交付申請は、事業計画書の中に記載した補助対象経費の確認と承認を目的としています。
見積書を用意し価格の妥当性をエビデンスとともに提出します。

④補助事業開始

交付決定が下されると、補助事業が開始できます。そのため、交付決定が下りる前に、対象経費の発注をすると補助対象外とみなされますので注意が必要です。
補助事業開始後に、事業計画に基づいた経費が対象となるので、これから行う補助対象設備への発注や支払いが可能となります。

⑤実績報告

補助事業が終了し、実施した計画の成果と経費の使用状況を取りまとめ、実績報告を行います。ここで、支払証明となる、納品書や、請求書など多くの資料が必要となります。

⑥補助金の請求と受領

実績報告が承認された後、補助金の支給を事務局側へ申請し、その後補助金が振り込まれます。

⑦事業化状況報告

補助金を活用した事業がどのように遂行しているか、事業実施後どのような効果が現れたかをまとめて提出する手続きです。
補助金の受領後を初回として、5年間に渡り四半期ごとに合計24回の報告が必要です。

採択されるためのポイント

作成した事業計画書を審査する上で、書面審査と口頭審査が行われますが、ここで「採択されるポイント」についてお話ししていきます。

書面審査

書面審査は、以下の4種類があります。

1)新規事業の有望度
2)事業の実現可能性
3)公的補助の必要性
4)政策点

公募回によって多少審査項目が異なりますが、大筋は変わりませんので、上記4項目を中心に記載することが重要な要素となります。
また、さらにはこの4項目の中においては、以下のような内容について記載していくと良いです。

1)新規事業の有望度

①市場が拡大していく中で、継続的な売上・利益確保できる
②許認可などの制度的な参入が自社にとって参入可能な事業
③競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立し差別化が可能

2)事業の実現可能性

①中長期的な観点から事業遂行できるだけの、スケジュール、課題や課題の解決方法を有している
②最近の財務状況から資金調達可能
③事業を適切に実施できるだけの体制が構築できる

3)公的補助の必要性

①経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、雇用創出が可能な事業である
②費用対効果が高い事業である
③先端的なデジタル技術を活用、新しいビジネスモデルの構築を通し地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献する
④ポストコロナ時代の社会変化に対応したビジネスモデル
⑤自社単独で容易に事業を実施できるものではない

4)政策点

①生産性の向上が見込まれる分野へ再構築を図り、日本経済の構造転換を促すことに資する
②先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用を通し、我が国の経済成長を牽引し得る
③新型コロナウイルスの影響を乗り越えV字回復を達成するための投資
④グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有す
⑤雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業

口頭審査

先述した通り、再構築補助金の申請では初めて、口頭審査が実施されます。

口頭審査は、補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者を対象にオンライン(Zoom等)にて、1事業者につき15分程度実施されます。一定規模以上という部分を開示してないため、現段階では不明です。
口頭審査期間は以下の通りです。下記日程のうち、事務局が指定のうえ、申請者に連絡があります。日時の変更や希望はできません。また事前に顔写真付きの身分証明書、安定したインターネットに接続されたPC等の準備が必要です。

口頭審査では、本事業に申請された事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について審査されます。また審査は申請事業者自身(法人代表者等)が対応しなければなりません。事業計画書作成支援者、経営コンサルタント、社外顧問等の申請事業者以外の者の対応や同席は一切認められないため、注意が必要です。

最後に〜13次公募と今後について〜

再構築補助金は、11次公募以降厳格な審査が行われたことにより採択率が約26%と非常に難易度が高い補助金です。

12次公募についても同様に厳しい審査が行われることが想定されます。採択を勝ち取るためには、事業計画書を認定支援機関の支援を受けながら事業計画の実現可能性を高め、しっかりと準備することが必要です。

なお、現時点(2024/9/29)では、まだ13次公募についての発表は行われておりませんが、令和5年度補正予算・令和6年度当初予算の中、執行面で必要な見直しを行う前提で予算が組まれており、追加予算も計上されない見込みが高く、12次公募または13次公募で終了するのではないかというのが大筋の意見です。

採択率が非常に低くなって通りにくくなってしまったからこそ、今後の事業再構築補助金については、今まで以上に申請書類の質が大事となります。
当サイトを展開する「リーパス」では、事業再構築補助金の申請についても、中小企業診断士を始めとしたプロフェッショナルが全力でサポートしますので、現在、事業再構築補助金を検討されている企業、事業者の方は、ぜひお気軽にご相談ください!

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