中小企業診断士でLeaPath(リーパス)会員の山田です。
今回は、「修了生が語る中小企業診断士養成課程にオススメな人とは?」と題してお送りします。
私は大阪にある大学の養成課程で1年間学び、無事修了して中小企業診断士に登録しました。
そこでは単なる資格だけではない様々なモノを得ることができたのです。
今回はその経験に分析を加え、より養成課程に向いている方、オススメな方を紹介してみたいと思います。
中小企業診断士養成課程とは
養成課程の概要と位置付け
中小企業診断士を目指されている方の中には、一度は養成課程に興味を持たれた方も多いのではないでしょうか?
「中小企業診断士登録養成課程」とは、「二次試験および実務補習」に代わるものとして、当課程を修了すれば中小企業診断士に登録できるというものです。ただし、一次試験は必ず合格する必要があります。
養成課程の実施機関は主要都市に存在しています。
■養成課程・登録養成課程実施機関一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/Yousei_TourokuKikan.pdf
実施機関によってそれぞれ特色がありますが、養成課程のカリキュラムは中小企業庁の定める標準モデルがありますので、どの実施機関もそれに沿ったカリキュラムが組まれているものと思います。
■登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル
https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/2006/download/touroku2-1karikyuramu.pdf
養成課程を選んだ理由
私は2022年に中小企業診断士二次試験を受験し、不合格でした。
不合格通知の直後に私が思ったのは、「あと1年対策をしてもはたして確実に合格できるコツを体得できるだろうか?」という不安でした。
これまで二次試験に不合格になった経験のある方なら分かると思いますが、中小企業診断士の二次試験は年数を重ねたからといって必ずしも合格に近づくとは言い難い特徴を持っています。(あくまで個人的な意見ですが)
そういった特徴に加えて、一次試験の合格者が二次試験に挑戦できるのはたった2度だけという厳しいルールがあります。
このようなルールの中、せっかく合格した一次試験の機会をどうしても失いたくないという思いから、確実に診断士登録に至るために養成課程を選択しました。
初めはそのような理由から養成課程という選択肢を私は選びましたが、
実際に養成課程を修了した現在、養成課程には「確実に診断士資格が取れる」というメリットだけでなく、数多くの大きなメリットが享受できる選択肢だと思っています。
養成課程で何を学び、何を得たか
では実際に、養成課程を通じて私が得たことや感じたメリットを具体的にお伝えしていきます。
①中小企業経営に関する幅広い知識
②グループワークを通じて得られる新しい考え方や経験
③長期間に渡る実習経験
④同期生との信頼関係と講師陣含めたネットワーク
①中小企業経営に関する幅広い知識
受講生は皆、一次試験(7科目)に合格していますから大方の知識は身に付けた人ばかりです。それを前提にして養成課程では講義が行われます。演習を通じてより知識を深め、実践レベルに変換した形で学び取ることができます。
実際に、現在第一線で活躍されている、知識や経験の多い講師陣が演習の講師として登壇されますので、テキストやレジュメには載っていない、リアルな現場感やコンサルテーションの現実を知ることができたのも、独立を考えていた私にとっては非常に貴重な経験となりました。
②グループワークを通じて得られる新しい考え方や経験
養成課程ではグループによるディスカッションやワークの時間が多く設けられており、授業の中でいくつかのグループに分かれ、ある課題に取り組んでいきます。
私が通っていた養成課程では、メンバーは課題ごとにランダムに決められました。課題解決のアプローチの仕方や意見への賛否はまちまちで、他の受講生のバラエティ豊かな考えに驚かされていました。
考え方の根本が異なる人と頭を突き合わせることによって、想像もしていない結論が見い出せたことは多かったです。
この経験は普段、同じ社内の社員同士でしか議論しない会社員の私にとっては実に新鮮でした。
実際に、他のメンバーやグループの発表内容や課題に対するアプローチの仕方から学んで得たことを、次回以降に生かしていく中で自分のモノとし、そういったお互いがお互いに高め合っていく場が提供されている、というのが養成課程で得られる大きなメリットの1つだと考えています。
また、リーダーとしてのファシリテーション力を試せたり、散らばった意見を収束させていく調整の過程は診断士の実務に大変役立つものと思われます。
③長期間に渡る実習経験
養成課程では、実際に中小企業に赴く実習のカリキュラムがあります。私が受けた養成課程では計5回(業界の異なる5社)、期間で言うと約5ヶ月間近くに渡る実習がありました。
そして、中小企業の社長とリアルに会い、ヒアリングや見学を通じて最終的に経営診断報告書を作成します。
報告書をまとめるにあたり、実に多くの時間をグループ内の議論に使います。当該社にて渾身の経営診断報告書をひっさげてプレゼンテーションを行うという、この経験も養成課程ならではといえるでしょう。
実務と同じように、実際に社長と何度もコミュニケーションを取り、どうすれば会社をより良くしていけるかを考え、社長へ報告・提案する経験できるというのはとても貴重で、特に中小企業診断士を取得後に独立を考えていらっしゃる方であれば是非ともオススメです。
④同期生との信頼関係と講師陣含めたネットワーク
そして何より、「養成課程を通じてすばらしい仲間を得たこと」も、私が養成課程に行ってよかったと心から思えることの一つです。
1年間楽しく、時にハードにワークした同期生とは「同じ釜の飯を食った」感覚があります。
また、登壇される多様な講師の方との出会いは貴重で、講師の方々との関わりは単に挨拶に留まりません。
一定の時間を共有し、演習内での発表を通じて考え方や意見を聞いていただけるというのは何物にも代えがたい時間となります。
診断士は時にチームを組んで課題に取り組む各々の専門性を発揮する診断もあります。養成課程で培われた横の繋がり、縦の繋がり、そういったネットワークが独立した今、実務の面で大いに活きていることを実感します。
養成課程がオススメな人とそうでない人について
以上の実体験をふまえまして、養成課程にオススメな人と、あまりオススメでない人を挙げてみます。
養成課程にオススメな人5選!
①確実に診断士資格を取得したい人
②診断業務や経営コンサルの経験がまったくない人、浅い人
③診断士ネットワークを早く築きたい人
④すぐに独立したい人
⑤経営に関する知見を深めたい人
①確実に診断士資格を取得したい人
一次試験合格のがんばりを無駄にしたくない、二次試験に2度不合格になることでまた振り出しから勉強し直すのは厳しい、と思っている方に養成課程はオススメです。二次試験対策で戸惑っている方や、勉強に挫折しかかっている人は、養成課程という手段も一つ検討するのはアリだと思います。むしろ、前述したように試験合格では得られないメリットが満載です!
知識は蓄積しているが、本番に弱く、二次試験で普段通りの力を発揮できないといった方も、養成課程は試験一発で合否が決まるという類のものはなく、長期間な成績を通じて評価されるので、あなたの実力を如何なく発揮できる可能性は高いです。
ただし、養成課程も入学試験(面接等)の倍率は3倍〜4倍と、倍率だけで見たら二次試験とそれほど変わらないことも少なくないので、その点は注意が必要です。
②診断業務や経営コンサルの経験がまったくない人、浅い人
前述のとおり養成課程には複数回の経営診断実習があります。
企業診断の経験が無い人でも比較的自由に挑戦でき、コンサルティングの疑似体験ができます。なにより、普段は中小企業の社長と触れ合う仕事でない人にとって、生の現場感を知ることはとても有意義です。
実際に他のメンバーが最終的に行った診断内容や提案内容から学べることはもちろん、実習担当の講師や取引先からの実習における提案内容に対する評価やフィードバック等をもらえて、自身の診断内容を振り返ることができるのも貴重な経験となります。
以上のように診断実習を通して、診断の経験を積めることは養成課程の大きなメリットと言えるでしょう。
③診断士ネットワークを早く築きたい人
講師の先生、養成課程の先輩、同期生など、養成課程に通えば実に多くの中小企業診断士と知り合います。つまり、自らが診断士登録をする時点で、もう既に多くの先輩診断士の顔と名前が分かりますので、迅速なネットワーク構築が可能になります。
中小企業診断士では、士業の中でも特に横の繋がり、縦の繋がりが大切と言われており、ネットワークが構築できていれば、案件を振っていただくなど仕事につながることも多いです。
診断士の場合チームを組んで、会社の診断・コンサルにあたることもあります。
もちろんチームを組む上では全く素性も知らない診断士をチームに入れるのはリスクとなりますので、ここでも診断士としてのネットワークが生きてきます。
④すぐに独立したい人
また、診断士として早期に独立したい人にも養成課程はオススメです。
二次試験ルートを通しての知識や経験のみで、自ら仕事を開拓し、顧客となる会社に対して経営コンサルを実践的に行なっていける自信がある方は問題ありません。既に需要の高い専門領域を持っている方やダブルライセンスの方、独立していて顧客を持っている方なども問題ないでしょう。
しかし、そうでない方は、養成課程ルートにおいては机上の学習だけでは得られない実践的な知識や経験と人脈を入手することができ、独立してからのスタートダッシュでは特に二次試験ルートと比べて、間違いなく軌道に乗せやすいため、オススメと言えます。
⑤経営に関する知見を深めたい人
養成課程では、実際に中小企業診断士としてご活躍されている多くの講師の方々から、現場のリアルも交えた演習(授業)や実習を行なってもらうことで、経営に関して実践的なことを色々と学ぶことができます。
また、講師だけでなく、同期にも実に多彩な人たちがいて、年齢的にも仕事の環境的にも異なる人たちが週に数度とかなり密に通う場となります。意見交換も活発にありますし、異業種の現況や自分だけでは解決しない課題なども語り合えたりして、経営に関してより前線に近い場所で学べると言えるでしょう。
養成課程があまりオススメでない人3選
①時間とコストを限りなく最小限にしたい方
②独学、自己流にこだわる方
③家族の協力が得られない方
①時間とコストを限りなく最小限にしたい方
養成課程に通うには比較的高額な費用がかかります。
また、1週間に数回の頻度でスクールに通い、土日にカリキュラムがある養成課程ではほぼ丸1日学習という日も多く設定されます。この「手間」と「お金」を出したくないという方には養成課程はオススメできません。
ただし、各養成課程によって費用や時間割は異なりますので、自らの許容ラインに合うコースが見つかる可能性はゼロではありませんので、自分に合った養成課程を探してみるのも手です。
②独学、自己流にこだわる方
チームを組んで1つの課題に取り組むといったグループワークが苦手な方や、自己流の学習の仕方に固執する方には養成課程は不向きかもしれません。
ただ、実際に診断士として実務を行う際には、協調性やリーダーシップ、ファシリテーション力などの要素は欠かせませんので、それらが苦手な方はむしろ養成課程で訓練するというのはオススメとも言えます。
③家族の協力が得られない方
子育て中の家庭など、夫婦で協力して生活リズムを築いている家庭などは特に、相手の配偶者の理解が欠かせません。
週に複数回学習に通えば、家事、育児などのルールを変更してもらわないといけない局面も出てくるでしょう。時に宿題の形で課題を持ち帰ることもあります。自宅での学習時間も少なくないと思いますので、お子様との外出などを犠牲にしなければならない日も出てくるでしょう。総合的な意味でご家族の理解と協力は欠かせません。
おわりに〜養成課程を修了した感想〜
養成課程を修了した感想について、これまで申し上げてきた内容でお分かりいただけると思いますが、
養成課程に通って「良かった」、それに尽きます。
一点補足しますが、私は「確実に診断士登録に至るために養成課程を選択した」と先述しましたが、実は養成課程に入学するのにも試験が必要でした。応募倍率は約4倍ほどだったと記憶しています。それも一次試験をクリアした優秀な人たちばかりが応募している中での倍率ですから、養成課程に入るのもけして簡単ではありません。
また、養成課程にかかるコスト(費用、時間)も多大なものがありましたが、それを踏まえても中小企業診断士登録養成課程に通う意義は十二分にあったと認識しています。
ぜひ、ご参考にしてみてください。