管理会計とは?目的や導入・やり方の流れについてわかりやすく解説!

LeaPath代表の中川です。
今回は、管理会計について解説していきます。
管理会計の構築方法についての詳細はリーパスの動画「中小企業のための管理会計構築方法」の中で述べていますが、今回は管理会計の枠組みを、基礎の部分をお話していきます。
是非、会計分野に課題がある、もしくは管理会計を導入しようとしている中小企業の皆様や、今後管理会計をサービスのひとつとして提供していきたい士業の皆様にご覧いただければ幸いです。

さて、管理会計とは何でしょうか?
財務会計という言葉や概念はご存知の方も多いと思います。一方、管理会計という言葉自体は知っているものの、それを実際に導入・運用・活用されている方はどの程度いらっしゃるでしょうか?
本記事では、管理会計の定義を紐解くとともに実際の管理会計の導入に際して必要な事前検討事項を中心に説明していきます。

管理会計の定義と目的

管理会計を一言でいうと、自社の経営に活用するために社内向けにまとめる会計のことで、迅速かつ正確で多面的な経営判断に活用するものです。
管理会計においては、この多面的というのが極めて重要になります。財務会計は会社単体もしくはグループ単位というあくまで全体の決算数値をまとめているだけですが、管理会計は、なぜその財務数値になっているのか?課題の要因は何なのか?という数値の解像度を上げ、経営の意思決定に役立てる会計です。
また、管理会計は原価計算、予実管理、資金繰り管理、経営分析、意思決定会計に分類され、すべて重要です。
コストを様々な角度から正確に数字を収集し計算する原価計算、予算と実績を複数の角度で対比させ課題を抽出する予実管理、キャッシュがショートしないように管理する資金繰り管理、積み上げた数字を、支店別/製品別・・・など複数の角度で分析する経営分析、経営陣の意思決定のために高度な分析を用いて経営数字を抽出する意思決定会計、これらを全て総合して、管理会計と言います。
本記事ではこの中でも特に経営分析にフォーカスを当てて説明していきます。

財務会計との違い

そして、何よりも管理会計をざっくりと理解するためには、財務会計との違いを理解しておく必要があります。
財務会計との違いを理解するには、以下の表が分かりやすいと思います。

  財務会計(制度会計) 管理会計

目的

外部への報告目的 内部への報告目的
内容

過去の業績報告
・会計制度に基づく財務諸表に関する会計情報

将来の業績改善
・経営の考え方に基づく経営管理に関する会計情報

利用者 ・社外の利害関係者(株主、債権者など) ・経営者、管理者など
ルール ・あり(会社法、会計基準) ・なし(会社独自の方法でOK)
実施 ・必須 ・任意
扱う数値 ・実績数値 ・実績、予算、見込みなど
集計単位 ・四半期、一年 ・事業、市場、部門、地域など
特徴 ・正確性 ・迅速性、独自性(経営戦略に繋がるか)

そもそもの目的が異なるため、財務会計と管理会計は似て非なるものです。
財務会計は外部、管理会計は内部への報告が目的となります。
また、財務会計が過去の業績報告に対し、管理会計は将来の業績改善に役立てるものです。加えて、管理会計ではルールは一切ありません。自社が取り巻く環境や自社の状況に応じた会計の仕組みを自由に作ることが可能です。
そして最も重要なのは、管理会計の仕組みを作る際に、「自社の経営戦略に資する会計情報を抽出できるか?」ということが重要な論点になってきます。では、次の章でその論点をかみ砕いてみましょう。

管理会計導入前の5つの論点

管理会計を導入する前にしっかりと押さえておかなければならない論点が5つあります。
この論点に関する協議をしっかり行わないまま管理会計を導入すると、「導入したはいいけど使い物にならない」ということになりかねません。
そのため、管理会計を導入する際には、以下の5つの論点をまずは押さえて十分に協議・定義してください。

  論点 事前に検討すべき内容
論点1 どのような視点で数字を見るか? l  会計数字をどのような切り口で見れば、経営戦略に役立てることができるか?

l  その切り口は、実際の事業の実態に紐づいているか?

l  切り口を絞り込む、もしくは切り口を拡大するための判断軸は何か?

中小企業で主に活用できる視点は、いままでの経験上11個あります(※)

論点2 どこまで深く数字を見るか? l  売上・コスト・利益をどこまで分解すべきか?

l  当社の課題の深淵は何で、どの深さでみれば課題を抽出できるか?

深さを定義する8つのポイントがあります。(※)

論点3 どうやってデータを取得・整備するか? l  論点1と2で定義した情報を現状の方法で取得できるか?

l  取得できないのであれば、どのようにデータを整備するか?

方法論としては2つあります(※)

論点4 管理会計のアウトプットをどう表現するか? l  誰がどのタイミングで数値を見るか?

l  どこまで分かりやすくグラフィカルに見せるか?

論点5 誰が管理するか? l  現場部門か管理部門か情報システム部か。それはなぜか?

レベル0からレベル3までで定義可能(※)

※こちら論点含めて、有料にはなりますがそれぞれ詳しく動画(中小企業のための管理会計)にて解説していますのでぜひそちらもご覧ください。

これらの論点を検討していくことで、自社に適した精度の高い管理会計を構築できることを今までの現場経験やコンサル経験で実感しています。
具体的な内容は、先述した動画にて説明していますので、是非ご覧ください。

いかがでしたでしょうか。今回は管理会計の基本的な考え方について説明しました。
経営力を向上させるためには、適切な目標値や指標を決め、それを持続的に様々な角度からモニタリング・改善し経営戦略を立てることができる管理会計の導入は必須です。
是非、ご参考にいただき、作成していただけると嬉しく思います。
リーパスでは管理会計の経験が豊富な士業が多数在籍しています。ご興味がございましたら、是非お問い合わせください。

この記事を書いたコンサルタント

中小企業診断士

中川 逸斗

同志社大学商学部商学科卒業後、IBMに入社し、広告、製造業、ゲーム会社などの大手企業の新事業構築、海外展開、IT戦略構築などのコンサルティング業務に従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社入社し、鉄道、ガス、小売、製薬などの大手企業の経営戦略構築、調達改革、経営再編、M&Aなどのコンサルティング業務に従事。 その後、Tech系スタートアップの取締役を経て、現在は日本自動調節器製作所の経営企画室の室長、戦略系コンサルティングファームのマネージャー、HAL経営コンサルティング合同会社の代表、LeaPath代表の4足の草鞋(兼業)で活動中。現在まで、大手企業から中小企業まで、計30社50プロジェクト以上のコンサル経験を持つ。また、中小メーカーの管理統括も同時に行っているため中小企業目線でのコンサルを得意とする。専門領域は経営戦略・DX・人事。

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