経営戦略と事業戦略の違いについて分かりやすく解説!

LeaPath代表の中川です。
今回は、経営戦略と事業戦略の違いについて説明していきたいと思います。
企業経営していると、戦略という言葉をあらゆるところで聞きますよね。今回説明する、経営戦略や事業戦略の他にも、マーケティング戦略、人事戦略、技術戦略など・・・・・ですね。
戦略という言葉だけだと小難しく感じることもあるかもしれませんが、戦略の定義をきちんと整理すると、比較的簡単に理解できるものです。
本記事を読まれる前に、経営における「戦略」の定義をまず知りたい方は、「経営戦略って何?基本となる考え方や定義、種類について」解説の記事をご覧ください。

結論(経営戦略と事業戦略の違い)

もったいぶっても仕方がないので、先に経営戦略と事業戦略の違いを端的に言います。

経営戦略 どこを目指すか?
事業戦略 目指した先で、どうやって勝つか?

です。

すごく端的に言いましたが、概念としては、これ以上でもこれ以下でもないと思っています。

受験の考え方と同じです。
学校の校風やレベルなどの外部環境や自分自身の学力などの自己分析をしっかりと行ったうえで、どの学校を目指すかを決めると思います。
どの学校を目指すのかを決めた後は、その学校の試験の傾向やライバルの動向(偏差値や合格率)、協力者の動向(塾・予備校など)を見て、受験勉強に励むことと思います。

経営も同じで、経営戦略では、市場や競合、顧客の状況や自社の経営資源を分析した上で、どの市場やターゲットを目指すかを決めます。
事業戦略では、経営戦略で決めた市場に存在する顧客や競合、協業候補などを分析し、その市場で勝つための方法を考えて実行します。

まずは、「どこを目指すか?」というのが経営戦略、「目指した先で、どうやって勝つか?」というのが事業戦略である。ということをご理解いただければと思います。
とはいえ、それだけであれば、どの企業も苦労はしませんので、次に、それぞれの戦略について、対比表をもとに、もう少し解像度を上げていきます。

具体的な違い

以下に、経営戦略と事業戦略の違いをまとめました。
この比較表をもとに、説明していきます。

  経営戦略 事業戦略
1.超ざっくり概念 どこを目指すか? 目指した先で、どう勝つか?
2.定義 目指すに値する市場をいかに見出し、その市場に対してどのように経営資源を配分するか? 競争優位をいかに構築するか?(差別化、コスト、ニッチなど)
3.戦略の範囲 会社全体の戦略 事業ごとの戦略
4.戦略を構築する人材 経営リーダー(社長、役員) 事業部長

1.超ざっくり概念

こちらは、先ほど説明したように、「どこを目指すか?」というのが経営戦略、「目指した先で、どうやって勝つか?」というのが、事業戦略ということです。

  経営戦略 事業戦略
1.超ざっくり概念 どこを目指すか? 目指した先で、どう勝つか?

2.定義

では、超ざっくり概念の解像度をもう少し上げてみましょう。

経営戦略の定義

まず、経営戦略は、「目指すに値する市場をいかに見出し、その市場に対してどのように経営資源を配分するか?」ということです。

経営戦略を構築するにあたっては、外部や内部の分析は欠かせません。例えば、伸びている市場や自社が強みを発揮できる市場、つまりは勝つことができる可能性があり、かつその規模や成長にも期待できる金脈を見つけ出すことが重要です。
しかしながら、その金脈は、ひとつではないかもしれません。ひとつでない場合は特に、自社のヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源を、どのくらいの割合や頻度で各金脈に配分していくかも決める必要があります。
「金脈を見つけ出すこと」と「各金脈にどの程度の資源を配分するかを決めること」が、経営戦略のコア部分となります。

事業戦略の定義

一方、事業戦略は、「競争優位性を如何に構築するか?」ということです。
経営戦略で、勝てる可能性がありかつ魅力的な市場である金脈を見つけ、各金脈への資源が配分されたとします。
事業戦略では、その配分された資源を使って、金脈に存在する競合(スタートアップの場合などは存在しない場合もあり)に対して、いかに競争上のアドバンテージを作れるか?ということが重要になるのです。

勝つための方法は、ひとつではありません。一見、同じような戦略(やり方)を取っている会社でも、伸びる会社もあれば、潰れる会社もありますよね。それは、競争する上でのアドバンテージは、様々な要因があるためです。
例えば、私がマクドナルドと全く同じ製品、サービス、店舗数を、仮に今から構築することができたとしても、当たり前ですが勝てません。それはブランド力が違い過ぎるためです。

つまり、事業戦略における競争優位性というのは、自社が勝てる要因を際立たせて、顧客に伝えるプロセス(どのように顧客へ商品・サービスをアプローチするか)であると言い換えることができます。
そして、その手段としては、大きく「差別化戦略」「コスト戦略」「ニッチ戦略」という3つのキーワードがあります。

差別化戦略

「製品・サービス」を他社と異なる、もしくは優れたものにする
(例):ユニクロでは機能性を重視した下着「ヒートテック」で、他下着との差別化に成功している。

「流通チャネル」、つまりは顧客に製品が届くまでのルートを他社と異なる、もしくは優れたものにする
(例):アスクルでは、独自ルートの構築によりオフィス用品の最短当日お届けを可能にしている。

「ブランド」を他社と異なる、もしくは優れたものにする
(例):スターバックスコーヒーというブランド確立により、期間限定商品を出す度に「スタバの新作」と話題になる。

などが挙げられる。

コスト戦略

安く作る仕組みを作り、低価格で販売したり、利益をうまく確保して競争上の有利を作る
(例):マクドナルドでは、材料仕入れから、製造、販売に至るサプライチェーンの徹底した効率化や業務のマニュアル化等を行うことで、どこよりも安いハンバーガーを提供することができる。

ニッチ戦略

だれも金脈があると気付いていない市場、もしくは金脈があると気付いていても、技術の問題や市場規模の問題などで、攻め入ることができない市場を、あえて狙い、そこでNo1になる

この3つの戦略のいずれかひとつを採用、もしくは組み合わせることで事業戦略は構築されていきます。

  経営戦略 事業戦略
2.定義 目指すに値する市場をいかに見出し、その市場に対してどのように経営資源を配分するか? 競争優位をいかに構築するか?(差別化、コスト、ニッチなど)

3.戦略の範囲

まず、経営戦略の範囲は言うまでもなく、会社全体(会社として目指したい方向)です。

一方、事業戦略の範囲は、同じ業界や市場でも会社ごとに異なることが多いです。
その理由は、同じ業界や市場でも、切り口が異なるためです。

例えば、「ヨーグルト事業」を考えてみましょう。ヨーグルト自体の市場は、「ヨーグルトを食べる人」なので、基本的に同じです。
しかし、以下のような3社のヨーグルトメーカーがあった場合はどうでしょうか。

A社のヨーグルト事業の考え方 ヨーグルトを食べる人全員を対象としている
B社のヨーグルト事業の考え方 年代別(高齢者用、子供用など)で区切った市場をそれぞれの事業として考えている
C社のヨーグルト事業の考え方 健康志向特化のヨーグルトを主な事業としている

このように同じヨーグルトでも事業の定義は各社ごとに異なってきます。各社が考えている競合が全て同一というのは、まずあまりないです。
ヨーグルトという金脈の中にも、いくつかの金脈があり、その土壌でどう戦い勝つのか?ということを事業戦略では考えるため、戦略の範囲は全社戦略と明らかに異なります。

  経営戦略 事業戦略
3.戦略の範囲 会社全体の戦略 事業ごとの戦略

4.戦略を構築する人材

では、最後に戦略を構築する人材をまとめます。
経営戦略は、会社全体の方向性(どこを目指すか?)を考えるわけですから、経営リーダー、つまりは社長や役員の方となります。

一方、事業戦略は、方向性の枠組みの中で、競争優位性をいかに構築するか?を考えるわけですから、その事業に責任を持つ事業部長中心となります。

しかしながら、多くの中小企業を見ていると、事業戦略はあっても、経営戦略がないパターンはそれなりに見かけます。
よくあるのが、社長や役員が事業戦略を考えているパターンです。経営戦略がない中で事業戦略を考えると、次の状況に陥ることが多いです。

会社が、いま以上に成長しない。

前述のヨーグルトの例で言うと、例えばヨーグルトだけを売っている単一事業の会社にとって、仮にチーズ市場にすごくチャンスがあるとします。そしてそのチーズを作ることができる経営資源もあり、勝てる可能性もあるとします。
それでも、経営戦略がない会社(どこを目指すかの戦略がない会社)は、いかに今いる市場でどう戦うかだけを考えてヨーグルトのみを作り続けて、飽和状態の市場の中で、市場シェアの奪い合いをひたすら繰り返していきます。

新事業や新市場に攻めることが、必ずしも正解ではないですが、経営リーダーは特に、常に外部にも目を向けて、チャンスを拾ってくるという意識を持つことが重要になってくると思います。

  経営戦略 事業戦略
4.戦略を構築する人材 経営リーダー(社長、役員) 事業部長

おわりに

以上、経営戦略と事業戦略の違いについてお話ししてきました。

リーパスでは経営戦略や事業戦略構築に強い士業が多数在籍しています。ご興味がございましたら、是非お問い合わせください。

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